相続によって取得した不動産を売却する際、「確定申告は必要なのか」と疑問に思う方もいるでしょう。相続不動産の売却には、通常の取引とは異なる税務対応が求められるため、事前に理解しておくことが重要です。
なかには確定申告が不要となる場合もあるため、どんなケースが該当するのか知っておくべきです。確定申告が必要かどうかを把握しないまま売却を進めてしまうと、後から追徴課税を受ける恐れもあります。
この記事では、相続不動産の確定申告が不要となるケースや手続きの流れ、特例について解説していきます。相続不動産の売却を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
また、以下の記事では、西湘エリアの空き家について触れているサイトなので、参考にしてみてください。
確定申告が不要になるケース

相続不動産の売却後に、確定申告が不要となるケースは、以下の3つです。
それぞれのケースについて解説していきます。
譲渡所得がマイナス(譲渡損失)となった場合
相続した不動産の売却によって、譲渡所得がマイナスになる、つまり譲渡損失が発生した場合には、原則として確定申告は不要です。課税対象の所得がないということになるため、申告義務が生じません。
ただし、確定申告を行うことで、譲渡損失を翌年以降に繰り越して、他の所得と相殺する制度を活用することも可能です。このような税制上の特例を希望しない限り、損失が出ていれば申告を省略しても問題ありません。
不動産を相場より低い価格で売却した場合は、譲渡損失の有無を把握することが大切です。マイナスになるかどうかは、売却を依頼した不動産会社に相談してみましょう。
譲渡所得と他の所得の合計が20万円以下の場合
相続した不動産を売却して得た譲渡所得と、給与など他の所得を合算した金額が20万円以下であれば、確定申告が不要となる場合があります。所得税法上、給与所得者で年末調整を受けている方が対象となる特例で、例外的な措置です。
ただし、20万円という基準はあくまで「所得額」であり、不動産の売却価格ではないため、取得費や譲渡費用を差し引く必要があります。実際の利益が20万円を超えないかどうかの判断は難しいため、売却前にシミュレーションをしておくのがおすすめです。
また、住民税の申告義務は別に発生する可能性もあるため、税理士や不動産会社に確認しておくと、確実な手続きが行えます。
特例適用により課税所得がゼロとなる場合
相続不動産を売却した際でも、特例を適用することで譲渡所得がゼロになり、確定申告が不要となるケースがあります。代表的な控除として、「居住用財産の3,000万円特別控除」があり、条件を満たせば最大3,000万円が控除されます。
売却によって得た利益がこの控除額以内であれば、課税対象が発生しないため、原則として申告義務はありません。ただし、特例の適用には要件や手続きが定められていて、合致していない場合は確定申告が必要になることもあります。
控除の対象となるかは状況によって異なるため、売却前に必ず確認しておくようにしましょう。
相続した不動産売却後の確定申告の流れ

相続した不動産を売却した後は、以下の流れで確定申告を進めます。
それぞれの手順について解説していきます。
必要書類を用意する
相続不動産を売却した後に確定申告を行うには、必要な書類を準備します。申告に必要な書類は、以下の通りです。
- 確定申告書の第一表、第二表及び第三表(分離課税用)
- 本人確認書類の写し(マイナンバーカードなど)
- 譲渡所得の内訳書【土地・建物用】
- 不動産を売却したときの売買契約書の写し
- 譲渡費用に関連する領収書などの写し
- 不動産を購入したときの売買契約書の写し及び購入手数料などの領収書の写し
これらの書類は、譲渡所得を計算するために欠かせないものであり、不備があると特例の適用や税額の算出ができなくなる恐れがあります。また、必要に応じて相続登記に関連する証明書類や、戸籍謄本なども求められるかもしれません。
書類の準備は時間を要する場合があるため、売却後は早めに対応することが望まれます。
譲渡所得を計算する
確定申告においては、譲渡所得の計算が必要です。譲渡所得は、以下の計算式で算出可能です。
- 譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
取得費は被相続人が不動産購入時の金額に加え、以下の費用が含まれます。
- 登記費用
- 仲介手数料
- リフォーム費用
相続時に取得費が不明な場合は、概算取得費として売却額の5%で計算することも可能です。一方、譲渡費用としては以下の費用が該当します。
- 不動産会社への仲介手数料
- 測量費
- 解体費
これらを売却価格から差し引くことで、譲渡所得が算出されます。適用可能な特例がある場合は、この段階で控除を反映させる必要があります。
確定申告書を作成する
譲渡所得の計算が完了したら、確定申告書を作成します。相続不動産を売却した場合は、以下の書類を作成する必要があります。
- 確定申告書B
- 分離課税用の第三表
- 譲渡所得の内訳書
国税庁の確定申告書作成コーナーを利用すれば、ガイドに従って数値を入力するだけで、自動計算しながら書類を作成できます。e-Taxを利用すれば、オンラインで完結させることも可能です。
不備があると申告の受理が遅れるため、控除の適用条件や添付書類の確認を含め、記入漏れがないように注意しましょう。
税務署へ申告書類を提出する
確定申告書の作成が完了したら、所轄の税務署へ提出します。提出方法としては、以下の3つがあります。
- 税務署へ直接持参
- 郵送
- e-Taxを利用した電子申告
提出期限は、原則として翌年の2月16日から3月15日までと定められていて、この期間内に書類を提出しなければなりません。期限を過ぎると、延滞税や加算税が発生する可能性があるため、早めに対応するのがおすすめです。
なお、申告に際しては本人確認書類やマイナンバーの提出が必要です。また、税務署窓口は混雑することもあるため、余裕を持って手続きを進めるようにしましょう。
提出後は控えの書類に受付印をもらうか、e-Taxの場合は送信完了の受信通知を保存しておくと、後日の確認にも役立ちます。
相続不動産の売却に適用する可能性がある特例

相続不動産を売却する場合、以下の特例が適用される可能性があります。
これらの特例を活用することで、売却に伴う税負担を軽減することが可能です。それぞれの特例について解説していきます。
取得費加算の特例
取得費加算の特例は、相続税を納めた人が、相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合、該当不動産に対応する相続税を取得費に加算できる制度です。これによって譲渡所得が減少し、課税額が抑えられます。
ただし、取得費に加算できる相続税額は、売却した不動産に対応する相続税評価額に基づいて計算され、譲渡所得を超える部分は控除対象外となります。また、空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除との併用はできないため、どちらの特例を適用するか判断が必要です。
適用条件や計算方法について詳しく知りたい場合は、税理士などの専門家に相談してみるのがおすすめです。
空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除
空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除では、譲渡所得から最大3,000万円を控除することが可能です。この特例が適用されるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 昭和56年5月31日以前に建築された
- 区分所有建物登記がされていない一戸建てである
- 相続開始直前に被相続人が一人で居住していた
- 相続後から売却までの間に事業用・貸付用・居住用として使用されていない
- 売却代金が1億円以下である
- 売却先が親族など特別な関係者でない
また、こちらの特例は他の特例と併用することができません。
3,000万円の特別控除を適用するには、市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、確定申告時に提出する必要があります。条件は厳しいですが、適用できれば税負担を大幅に軽減できるでしょう。
居住用財産の3,000万円特別控除
相続した不動産を売却する際に、居住用財産の3,000万円特別控除が適用されると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。この特例は、被相続人が居住していた家屋や、その敷地を相続人が売却する場合に適用されます。
ただし、適用には以下の要件を満たす必要があります。
- 被相続人が一人で居住していた住宅である
- 昭和56年5月31日以前に建築された
- 売却価格が1億円以下である
また、特別控除を受けるには、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却しなければいけません。
この特例を活用することで、譲渡所得税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。条件に該当する場合は、国税庁などの公的機関のサイトをチェックし、正式に適用されるか確認しましょう。
長期譲渡所得の軽減税率
所有期間が10年を超える居住用財産を売却する場合、長期譲渡所得の軽減税率の特例が適用されます。この特例では、以下のように税率が割り当てられます。
該当部分 | 税率 |
---|---|
6,000万円以下 | 14.21%(所得税10.21%、住民税4%) |
6,000万円超 | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
この特例を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 売却する不動産が日本国内にある居住用財産である
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている
- 売却した年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていない
- 親子や夫婦など特別な関係がある人に対して売却していない
なお、この特例は「居住用財産の3,000万円特別控除」との併用が可能であり、適用条件を満たせば、譲渡所得から3,000万円を控除した上で軽減税率を適用できます。
相続した不動産を売却する際に発生する税金

相続した不動産を売却する場合、以下の税金が発生します。
それぞれの税金について解説していきます。
所得税
相続によって取得した不動産を売却した場合、その利益には所得税が課されます。課税対象となるのは、譲渡所得です。
譲渡所得が発生した場合、所有期間に応じて短期・長期の区分に分類され、それぞれ税率が異なります。相続不動産の売却では、原則として長期譲渡所得として扱われるケースが多く、税率は通常15.315%となります。
ただし、特例や控除を適用することで、実質的な負担が軽減されることもあります。
住民税
相続した不動産の売却時に発生する住民税は、原則として譲渡所得に対し5%が課され、所得税とは別に地方自治体へ納付する義務があります。
課税の対象となるのは譲渡益であり、特例控除を適用する場合は、その後の金額に対して課税されます。たとえば、居住用財産の3,000万円特別控除などを利用して課税所得がゼロになれば、住民税も発生しません。
住民税の納付は通常、売却年の翌年6月以降に通知が届き、分割納付が行われます。そのため、申告後すぐに住民税を支払う必要はありません。ただし、申告を怠ると延滞金が発生する場合もあるため、税額の見積もりや納付日を事前に把握しておくことが重要です。
印紙税
印紙税は、不動産売却の過程で作成される文書に課される税金であり、不動産売買契約書などが対象です。印紙税額は、契約金額に応じて以下のように決まります。
売却金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
100万円~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000円~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
印紙税の負担は、売主と買主のどちらにするか契約で定められますが、実務では折半するケースが多く見られます。売買契約書には所定の金額の収入印紙を貼付し、消印を行うことで納付が完了します。
登録免許税
相続による所有権移転登記に対して、登録免許税が課税されます。登録免許税の計算方法は、以下の通りです。
登録免許税=固定資産税評価額×0.4%
例えば、評価額が1,000万円の不動産を相続した場合、登録免許税は4万円となります。ただし、計算時には1,000円未満の端数を切り捨て、さらに算出された税額の100円未満も切り捨てます。
なお、2022年度の税制改正により、相続した土地の評価額が100万円以下の場合、登録免許税が免除される措置が設けられました。この免税措置を受けるには、登記申請書に所定の条項を記載する必要があります。
また、相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続発生から3年以内の登記が求められるようになります。
復興特別所得税
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源確保を目的として導入されたもので、平成25年から令和19年までの各年分の所得税に対して課されます。具体的には、基準所得税額に対して2.1%の税率が上乗せされます。
相続不動産の売却で譲渡所得が発生し、所得税が算出された場合、その金額に2.1%を乗じた額が復興特別所得税として課税されます。
復興特別所得税額は、確定申告書の作成時に自動的に計算され、所得税と合わせて申告・納付が必須です。復興特別所得税の適用期間は令和19年までとされており、それまでの間は毎年の所得税に対して加算されます。
相続した不動産売却の確定申告における注意点

相続した不動産売却で確定申告が必要になった場合、以下の点に注意しましょう。
それぞれの注意点について解説していきます。
取得費が不明だと課税額が増えるリスクがある
確定申告で譲渡所得を算出するには、取得費が明確でないといけません。不動産の購入代金や取得時にかかった諸経費を指す取得費ですが、被相続人が取得時の資料を残していない場合、取得費が不明となり、概算取得費を用いることになります。
概算では売却価格の5%を取得費とするため、本来よりも譲渡所得が大きくなり、課税額が増える可能性があります。そのため、生前から取得費の資料を共有したり、相続後に登記簿や売買契約書の写しなどを探すなど、取得費を証明できる書類をそろえておくことが必要です。
特別控除が併用できない場合がある
相続した不動産の売却については、特別控除が併用できない場合があります。たとえば、以下の特例は同時に適用できません。
- 相続財産の取得費加算の特例
- 相続した空き家の3,000万円特別控除
また、同一年内に複数の不動産を売却し、それぞれで特別控除を適用する場合、控除額の合計が3,000万円を超えることはできません。
全ての特別控除が併用できないわけではないため、適用される特例の条件について確認する必要があります。また、不動産会社や税理士に相談するのもおすすめです。
相続してすぐ売却すると短期譲渡となって税率が高くなる
相続した不動産の所有期間によって、適用される税率は異なります。5年を目安に短期・長期と分けられ、以下のような税率となります。
所有期間 | 税率 | |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
相続による取得の場合、所有期間の起算日は被相続人が不動産を取得した日となります。そのため、被相続人が長期間保有していた不動産を相続した場合、すぐに売却しても長期譲渡所得として扱われ、低い税率が適用される可能性があります。
しかし、被相続人の取得日が比較的最近である場合、売却時点で所有期間が5年を超えていないと短期譲渡所得となり、高い税率が適用されます。このような場合、売却のタイミングを調整することで、税負担を軽減できる可能性があります。
売却費用の領収書は保管する
売却後の確定申告で譲渡所得を計算するには、売却にかかった費用の領収書を必ず保管しておく必要があります。以下の費用は譲渡費用として認められ、譲渡所得から差し引くことが可能です。
- 仲介手数料
- 測量費
- 建物の解体費
- 広告費
しかし、支出があったことを証明する書類がない場合、経費として計上できず、課税対象額が増えるおそれがあります。税務署から確認を求められた際に領収書がないと、特例の適用にも影響を与えるでしょう。
売却時に受け取ったすべての領収書や支払明細書は、提出義務がなくても申告書類と一緒に保管し、必要に応じて提示できるようにしておきましょう。
原則3月15日の申告期限を厳守する
相続した不動産の売却後の確定申告は、期限を守らなければいけません。
譲渡所得に関する申告は、翌年の2月16日から3月15日までと定められていて、期間内に手続きを完了させることが義務づけられています。期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課される可能性があり、税金を支払う事態になりかねません。
また、適用を予定していた特例や控除も、期限内に申告しなければ無効となります。特に相続による取得や譲渡に関しては、書類の準備や計算が煩雑になりやすいため、余裕をもって準備を進めることが求められます。
西湘エリアの相続不動産の売却ならハウスドゥ 小田原市役所前がおすすめ

西湘エリアで相続不動産の売却を検討されている方には、ハウスドゥ 小田原市役所前がおすすめです。
小田原市を中心に地域密着型のサービスを展開し、豊富な売却実績を持っています。経験豊富なスタッフが在籍し、相続に関する手続きや税務相談にも対応可能です。
項目 | 詳細 |
---|---|
屋号 | ハウスドゥ 小田原市役所前 |
会社名 | 株式会社Forest field |
所在地 | 〒250-0042 神奈川県小田原市荻窪531-6 |
電話番号 | 0465-34-2555 |
公式HP | https://odawarashiyakusyomae-housedo.com/satei/ |
免許番号 | 神奈川県知事(1)第31148号 |
また、確実な査定と価格提示で、スムーズな売却をサポートします。相続不動産の売却に関するご相談は、ハウスドゥ 小田原市役所前へお問い合わせください。
また、ハウスドゥ 小田原市役所前の空き家買取や不動産売却について気になる方はお問い合わせしてみてください。
まとめ

相続不動産の売却で確定申告が不要となるケースは、以下の3つです。
- 譲渡所得がマイナス(譲渡損失)となった場合
- 譲渡所得と他の所得の合計が20万円以下の場合
- 特例適用により課税所得がゼロとなる場合
確定申告が不要かどうかは、不動産会社や税理士の判断に任せることをおすすめします。売主の判断では計算ミスや適用条件の確認漏れなどが起こりやすいため、専門家に確認してもらうのがおすすめです。
そのためには、売却を依頼する不動産会社が信頼できるかが重要です。相続不動産の売却に実績のある不動産会社を選び、売却後の確定申告までアドバイスを受け、適切に手続きを進めましょう。