相続によって取得した不動産の売却は、一般的な手続きに比べて複雑になっています。特に必要書類や税金を理解していないと、適切な手続きができないだけでなく、売却後も対応が求められる可能性があります。
相続不動産の売却は不動産業者と進めるのが基本ですが、売主にも知識が必要です。どのように手続きを進めるのか理解しておくと、不動産会社と連携してスムーズな売却を実現しやすくなります。
この記事では、相続不動産の売却手順や必要書類、発生する税金、特例について解説していきます。相続不動産の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
また、以下の記事では、西湘エリアの空き家について触れているサイトなので、参考にしてみてください。
相続した不動産の売却手順

相続した不動産を売却するまでの手順は、以下の通りです。
それぞれの手順について解説していきます。
相続登記・名義変更
相続した不動産を売却するには、相続登記を行い、所有者の名義を変更することから始めます。これは法務局での手続きとなり、相続人が正式な所有者であることを証明するために必要です。
名義変更を行わなければ、売却手続きを進められず、買主との契約締結もできません。相続登記・名義変更の手続きには、以下の書類が必要です。
- 被相続人の戸籍
- 遺産分割協議書
- 不動産の登記簿謄本
登記手続きは司法書士に依頼することも可能であるため、不安な場合は専門家のサポートを活用するのがおすすめです。
不動産の調査・査定
相続登記が完了したら、不動産の調査と査定を行います。まずは不動産の以下の情報を調査します。これらの情報は、登記簿謄本や固定資産税評価証明書、公図などで確認できます。
- 所在地
- 面積
- 築年数
- 接道状況
- 法的規制の有無
調査した内容ををもとに、不動産会社へ査定を依頼することで、売却可能な価格帯が明らかになります。より正確な価格を知りたい場合は、現地調査を伴う訪問査定がおすすめです。
複数の不動産会社に依頼することで、価格や販売方針の比較が可能になり、適正な売却戦略を立てやすくなります。
不動産会社と媒介契約の締結
不動産の査定を終えた後は、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約とは、不動産会社に仲介売却を依頼する契約であり、売主と業者の間で業務内容や報酬などを明確にする手続きです。
契約には以下の種類があり、それぞれ依頼できる会社数や販売活動の報告義務に違いがあります。
- 専属専任媒介
- 専任媒介
- 一般媒介
どの契約形態が適しているかは、売却の希望時期や対応力、不動産会社への信頼度などを基に慎重に判断することが求められます。
契約書には期間や販売活動の内容などが明記されるため、内容を十分に確認してから署名・捺印することが重要です。信頼できる不動産会社を選ぶことで、円滑な売却につながります。
販売活動
媒介契約を締結した後、不動産会社による販売活動が始まります。販売活動では、不動産ポータルサイトへの掲載をはじめ、以下の手法を用います。
- 店頭掲示
- チラシ配布
- 既存顧客への紹介
物件の魅力を伝えるには、写真撮影や間取り図の提示、物件情報の整理が欠かせません。売主としては、内見希望者への対応が必要です。清掃や空間演出を行うことで印象を良くし、成約につなげやすくなります。
販売期間中は不動産会社から活動報告が行われるため、内容を確認しながら対応を調整していくことが求められます。価格設定が市場相場と乖離している場合は、定期的に調整することも必要です。買主と売買契約の締結
購入希望者が現れ、条件面での合意が得られた段階で、売主と買主は不動産売買契約を締結します。
契約書は不動産会社が作成し、双方が確認したうえで署名・捺印を行います。契約時には買主から手付金が支払われ、これをもって契約が成立したと見なされるのが一般的です。
契約後の一方的なキャンセルは原則として認められず、違約金が発生するケースもあるため、契約前には十分な説明が必要です。
決済・引き渡し
売買契約の締結後は、決済と物件の引き渡しを行います。決済日は、買主が売買代金の全額を支払い、売主が不動産を引き渡します。基本は金融機関で行われ、同時に司法書士が所有権移転登記を行うことで、所有者が切り替わります。
売主としては、不動産の鍵や設備説明書、管理書類などを揃えておく必要があり、買主への引き継ぎ対応が求められます。住宅ローンの残債がある場合は、同日に抵当権抹消手続きも必要です。
決済と引き渡しが完了すれば、売買は正式に成立し、売主の責任もほぼ終了します。
相続した不動産の売却に必要な書類

相続不動産の売却では、必要な書類が多くあります。書類の種類は大きく分けて、以下の2種類になります。
それぞれの手続きで必要な書類について解説していきます。
相続の手続きで必要な書類
相続の手続きで用意するべき書類は、以下の通りです。
- 被相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の住民票
- 遺産分割協議書
- 遺言書(ある場合のみ)
- 不動産の固定資産評価証明書
代表的なものとしては、被相続人の戸籍謄本があり、出生から死亡までの記録を通して法定相続人を確定します。併せて、相続人全員の戸籍謄本や住民票も必要です。
被相続人の住民票の除票は、登記の名義変更で必要となります。さらに、財産の分割内容を記載した遺産分割協議書や、遺言書がある場合はその写しも必要となります。
これらの書類は登記や税務手続きに不可欠であり、漏れなく揃えることで、相続登記や売却の準備が円滑に進められます。
不動産売却に必要な書類
不動産売却の手続きで必要になる書類は、以下の通りです。
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 登記済権利証または登記識別情報通知
- 固定資産税納税通知書
- 不動産の図面・間取り図・パンフレット等
- 身分証明書(運転免許証など)
- 実印および印鑑証明書
まず、対象物件の権利関係を証明するために、登記簿謄本や登記済権利証が必要です。また、固定資産税額の把握や引渡し時の精算には固定資産税納税通知書も欠かせません。
他にも、物件の図面や間取り図、パンフレットなどがあれば、買主への説明がスムーズになります。
これらの書類を整えることで、売却手続きが円滑に進み、トラブルを回避することが可能です。必要な書類については不動産会社から伝えられるため、順次対応していくようにしましょう。
相続不動産を売却するときに発生する税金

相続不動産を売却する場合、以下の税金が発生します。
それぞれの税金について解説していきます。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益である譲渡所得に課される税金で、所得税と住民税が含まれます。譲渡所得は、以下の計算式で算出されます。
- 譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
相続の場合、取得費は被相続人の購入時の価格を引き継ぐ形となるため、古い物件では取得費が不明確なケースもあります。このような場合には、概算取得費として売却額の5%を取得費とみなすことも可能です。
なお、所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり、税率が軽減されます。譲渡所得税については特例が適用されるケースもあるため、税理士や不動産会社に相談するのがおすすめです。
登録免許税
相続登記を行う際に発生するのが、登録免許税です。被相続人から相続人へ所有権を移す手続きで発生するため、登録免許税の支払いは必須となります。課税額は、以下の計算式で算出します。
- 登録免許税=固定資産税評価額×0.4%
たとえば評価額が2,000万円であれば、登録免許税は8万円となります。登録免許税は評価額が高いほど税額も増加します。なお、相続による登記は義務化されており、正当な理由なく申請を怠ると、過料の対象となるため注意が必要です。
登録免許税は売却益に直接関係するものではありませんが、売却において不可欠な費用です。そのため、早い段階での資金計画に組み込むようにしましょう。
印紙税
印紙税とは、契約書に対して課される国税で、売買金額に応じて税額が定められています。売却価格と印紙税については、以下の通りです。
売却金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
100万円~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000円~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
印紙税は契約書に収入印紙を貼付し、その上から消印を行うことで納付と見なされます。令和9年3月31日までの期間であれば、印紙税について軽減税率が適用されます。
相続した不動産の分割方法

相続した不動産は、以下のいずれかの方法で分割する必要があります。
それぞれの方法について解説していきます。
現物分割
現物分割とは、相続した不動産を実物のまま相続人が分け合う方法です。具体的には、1つの土地を相続人同士で分筆してそれぞれが所有したり、建物と土地を別々の相続人が取得する形が該当します。
現物分割は不動産をそのまま利用できる点が特徴で、活用を希望する相続人にとっては有利な分割方法と言えます。
一方で、不動産の評価額に差があると不公平が生じやすく、分筆によって土地の価値が下がるリスクもあります。実施には測量や登記などの手続きが必要となるため、専門家のアドバイスを受けながら進めるのがおすすめです。
換価分割
換価分割とは、相続した不動産を売却し、その売却代金を相続人の間で分ける方法です。現物を共有せずに金銭で分割するため、平等に分けやすいのが特徴です。不動産の利用予定がない場合や、相続人の人数が多い場合に適しています。
ただし、売却には手間がかかり、市場動向によっては希望通りの価格で売れない可能性もあります。また、譲渡所得税が発生するため、税務上の確認も必要です。
換価分割を選ぶ際は、相続人全員の同意と売却後の配分方法について明確にしておくようにしましょう。
代償分割
代償分割とは、相続人の1人が不動産を単独で取得し、その代わりに他の相続人へ現金などを支払って分割する方法です。不動産を共有せずに済むため、将来的なトラブルを避けやすいとされています。
特定の相続人が不動産を使い続けたい場合や、共有を望まない相続人がいる場合に有効です。
ただし、代償金を支払う側には十分な資金が必要となるため、経済的な負担が大きくなるケースもあります。相続税や不動産評価にも影響するため、代償分割を検討する際は、専門家と相談しながら進めてください。
共有分割
共有分割とは、相続した不動産を相続人全員で共有名義にする分割方法です。特定の相続人に帰属させるのではなく、持分割合を定めて共同所有とするため、分割が難しい物件にも対応できます。
ただし、意思決定には共有者全員の合意が必要となるため、将来的に売却や活用をめぐってトラブルが生じることもあります。また、共有状態が続くと管理や維持の負担が分散しにくく、対応が遅れるリスクも懸念されます。
スムーズな共有分割を行うためには、持分ごとの権利関係や管理ルールを事前に取り決めておくことが大切です。
譲渡所得税に係る特例3選

譲渡所得税が発生する相続不動産の売却では、以下の3つの特例を活用するのがおすすめです。
それぞれの特例について解説していきます。
相続税の取得費加算に関する特例
相続税の取得費加算に関する特例とは、相続や遺贈により取得した不動産などを一定期間内に譲渡した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算し、譲渡所得税の負担を軽減できる制度です。
適用要件としては、以下のような条件が挙げられます。
- 相続税が課税されていること
- 相続開始の翌日から3年10か月以内に譲渡していること
取得費に加算できる相続税額は、譲渡した財産の相続税評価額に基づいて計算されます。これによって譲渡所得が減少し、納税額が抑えられます。ただし、適用には確定申告が必要であり、必要書類の提出も求められます。
空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除
空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除は、相続または遺贈により取得した空き家を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です 。適用には、以下の条件を満たしている必要があります。
- 被相続人が一人暮らしであった
- 建物が昭和56年5月31日以前に建築された
- 区分所有建物でない
- 相続開始から譲渡までの間に事業・貸付・居住に使用されていない
3,000万円特別控除の適用期間は、相続開始日から3年後の12月31日までとなっています。
また、確定申告時に「被相続人居住用家屋等確認書」などの必要書類を添付する必要があります。手続きの手間はかかりますが、相続した空き家の売却時の税負担を軽減することが可能です。
居住用財産(マイホーム)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除
居住用財産に係る譲渡所得の3,000万円特別控除とは、相続した不動産をマイホームとして使用していた場合に適用される特例です。譲渡所得から最大3,000万円まで控除できるため、売却益が大幅に軽減されます。
ただし、適用には以下のような一定の要件があります。
- 被相続人が居住していた
- 譲渡時に他の特例と併用しない
相続後すぐに売却する場合でも適用可能ですが、適用されるかどうかは専門家にチェックしてもらうのがおすすめです。適用可否を明確にし、スムーズに利用できるようにしましょう。
相続した不動産を売却する際の注意点

相続した不動産の売却では、以下の点に注意して進める必要があります。
それぞれの注意点について解説していきます。
相続人全員の同意がないと売却できない
相続した不動産を売却するには、相続人全員の同意が必要です。遺言で明確な指定がない限り、相続開始時点では不動産は相続人全員の共有状態となっており、勝手に単独で売却することはできません。
1人でも反対する相続人がいれば、売却手続きは進められず、話し合いや調停が必要になります。
そのため、売却を希望する場合は遺産分割協議を行い、全員が合意のもとで所有権を整理することが重要です。事前の情報共有や信頼関係の構築を経て、売却を検討するようにしましょう。
売却期限は3年以内が目安
相続した不動産については、売却のタイミングが重要となります。
目安としては、相続から3年以内の売却を検討しましょう。これは、譲渡所得にかかる税負担を軽減する特例が適用される期限が、原則として「相続開始の翌日から3年を経過する年の12月31日まで」とされているためです。
3年という期限を過ぎると、3,000万円の特別控除などの税制が受けられなくなる可能性があり、結果として手元に残る金額が少なくなることもあります。
売却を検討する際は、該当する特例の適用条件を理解し、スケジュールを意識して行動することが求められます。
譲渡所得があった場合は確定申告が必要
相続した不動産を売却して譲渡所得が発生した場合、原則として翌年に確定申告を行う必要があります。譲渡所得は、利益が出ていれば課税対象となります。
譲渡所得のうちの取得費には、不動産価格やリフォーム費用などが含まれますが、資料が残っていないと概算で計算されます。また、税務上の手続きが不十分だと、延滞税・加算税の対象になる恐れがあるため注意が必要です。
確定申告の手順に不安がある場合は、不動産会社や税理士に相談するのがおすすめです。期限内に適切な手続きを完了させられるように、十分に対策しておきましょう。
信頼できる不動産会社に依頼する
相続した不動産を売却する際は、信頼できる不動産会社に依頼することが重要です。
相続物件は権利関係が複雑になりやすく、手続きや税務処理にも専門的な知識が求められます。そのため、実績のある会社であれば、法的チェックから必要書類の整備まで、一貫してサポートしてくれます。
また、相場に即した価格の提案も可能となり、売主としても希望価格での売却が見込めるでしょう。
信頼できる不動産会社を選ぶ際は、複数社を比較し、相続案件の取り扱い実績がある会社を選ぶことが必要です。選定には時間をかけ、じっくりと検討するようにしましょう。
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まとめ
相続した不動産を売却するには、手続き・税務・分割方法などを理解する必要があります。分割方法の種類や、譲渡所得税に関する特例の適用条件を把握することで、安全に売却することが可能です。
とはいえ、相続不動産の売却は人生で何度も経験することではありません。そのため、売却を依頼する不動産会社に相談して、専門的なサポートを受けることをおすすめします。
信頼できる不動産会社を見つけて、安全で確実な売却を目指しましょう。